ワスレナグサ 2

ワスレナグサ 2

ナグサちゃんトリニティ回です。軽いです

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着いた場所は、廃墟だった。

あちこちにテントが張られている。

ナグサ「・・・えっと・・・・」

辺りを見渡す。

瓦礫。瓦礫。瓦礫。

辺りにはヘラヘラと座り込むトリニティの生徒たちが見える。

皆目の焦点があってないし、果たして正気を保っているのだろうか。

あるいは、ここはまだ砂糖に汚染されているのだろうか。

ナグサ「・・・古書館・・・古書館は・・・?」

地図ももう機能してないので、こうなったら人に聞くしかない。

しかしこんな人たちに聞いてもどうせ答えは得られない。

すると、いかにも普通そうな少女が通りかかった。

一般のトリニティ生だ。

ナグサ「あっ・・・あのっ!」

ヒフミ「・・・はっ、はいっ?!」

暗い表情で俯きながら歩いていた彼女は、私が話しかけたことでびっくりしてしまった。

ナグサ「こ、古書館・・・古書館ってどこですか?」

精一杯言葉を絞り出しながら、目的地への道を尋ねる。

ヒフミ「え、えっと・・・あっちです!あっちあっち!」

瓦礫の山の向こうにあるとてつもなく古そうな建物を指差す。

ナグサ「・・・ありがとうございます!!」

ヒフミ「ど、どういたしまして・・・」

私は荷物を抱えながら、そこへ急いだ。



ウイ「・・・いぇぇ、でぇ・・・、この子達を・・・・解読してほしい・・って、ことですか・・・」

ナグサ「・・・そう・・・です。」

本の山を前に、ウイは眼鏡を外す。

ナグサ「・・・あっ、お金とか・・・」

ウイ「アッ・・・オお金は・・・とらないですぅ・・百鬼夜行の古代の本なんて、ミ見せてもらえるだけでもあっありがたいですし・・・」

ウイはそういうと、本の束の周りをぐるぐる回る。

猫背で椅子に座っていた時を見ていたので、立ち上がった彼女を見て少し驚く。

背が高い。少なくともアヤメよりは。

ナグサ「・・・そ、その。何時間くらいで・・・」

ウイ「・・・ろ、6時間もあれば・・」


・・・・。

解析が終わる6時間の間、私は何をすればいいんだろうか。

彼女の邪魔はしたくないので外に出てしまった。

古書館の前に座り込み、辺りを見渡す。

私が知っているトリニティは、ロマネスク様式からバロック・ロココ様式まで、多様な建築様式の伝統的な建物が建ち並ぶ、百鬼夜行とはまた違った幻想的な場所だったはずだ。

すると、複数の足音がした。

「御稜ナグサ」

どこか聞き覚えのある声。

ナグサ「・・・百合園・・・セイア・・・」

去年の11月頃、私の夢に入り込んできたあの夢魔にして、トリニティ総合学園の事実上の生徒会長の姿がそこにあった。

セイア「・・・少し、お茶をしないかい?」

断る理由もない。私は彼女の提案に同意した。


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ティーパーティー専用お茶会車両

セイア「・・・まず、こんなボロボロの自治区ですまない」

彼女は紅茶を一口飲み、私を見てそう話す。

この紅茶の砂糖はどうやら平気そうだ。


ゲヘナ製だから。


ナグサ「なんでこんなに・・・ボロボロなの?」

セイア「・・・人が足りないんだ。トリニティでは伝統的建築様式で建物を建てるという決まりがあるんだけど、内戦の結果ほとんどの人がいなくなってしまってね。あのような建築が不可能になってしまったんだ。それにトリニティの生徒達はこだわりが強くてね。なかなか現代的建築に適応できないんだ。」

1000年近くの伝統があるトリニティだからこその弊害だろう。

伝統的な建築にこだわり、そうでない場所を自分の家と考えられない。

セイア「・・・あと、君の頭の中に入り込んですまない。・・・追い出されたおかげでなんとか私も正気を取り戻せた」

君の中には、強い少女が同居しているねと付け加える。

・・・アヤメのことを言っているのだろうか。

本当はあの夢から抜け出せた理由はユカリが昼寝中に寝ながらトリプルアクセルをかましてきた・・・ということなのだが、勘解由小路家のお嬢様の寝相をバラすのは可哀想なので言わない。

ナグサ「・・・運が良かっただけだよ」

セイア「・・・そういうことにしておこう。・・・さて。本題に入ろうか」

彼女はティーカップを置くと、真剣な目で私を見つめる。

そんな目で見られても何も出てこないのに。

セイア「・・・私が予知能力を持っていることは知っているね?・・・昔よりは衰えたが、ある程度の未来は簡単に分かる」

・・・大預言者クズノハほどではないが、彼女もまた予知ができる存在らしい。そこまでは知らなかった。

セイア「・・・私の知ることの内に何点か、君にも共有すべきことがあるからね。それに幸い君がトリニティを訪れることも分かっていた。百鬼夜行を訪れる手間も省けたよ」

ナグサ「・・・それは・・・アヤメについて?」

セイア「それも含まれるね」

一息つくと、彼女はマカロンに手を伸ばす。

私も手を伸ばして、マカロンを頬張る。

このお菓子はポロポロ崩れるので、アヤメは一口で食べていた。

セイア「・・・まず一つ目。これはアヤメについてだね。・・・・彼女は生きている」

思わず目を見開いて、手にしていたティーカップを強くおいてしまう。音が立つ。

ナグサ「どっ、どこに・・・あっ・・・ごめんなさい」

セイア「いや、大丈夫。これは壊れないからね。・・・『アヤメは生きたり。なれどキヴォトスにはあらず。』・・大預言者クズノハは私にこう言ったよ」

アヤメは生きているけれど、キヴォトスにはいない。そういうことだ。

キヴォトスにいないのなら、この広い星のどこにいるのだろうか。

ナグサ「・・・私は、アヤメに会える?」

セイア「それは教えられない。ただ、クズノハは、君が強く望めば。されど、何かを捧げる覚悟を持つべし。とだけ」

私次第。アヤメに会えるかは私次第。

セイア「さて、次だ。・・・これもまたアヤメに関することだけど、『君を邪魔するもの』は、もういない。これだけだけれど、君にとっては朗報じゃないのかい?」

ナグサ「・・・そうだね」

アヤメを助けに行くにおいて、やはり『百物語』は邪魔だ。しかしもういないのなら・・

セイア「・・・そしてこれは最後の情報。・・・小鳥遊ホシノは生きている」

アヤメの話が吹き飛びかけるほどの衝撃が頭を駆け巡る。

あのアビドスカルテルのトップが生きているのなら、再び世界に危機が訪れるかもしれない。

そうすれば、私のアヤメを探す計画にも支障が・・

セイア「・・・北極圏でC&Cが失踪した事件があっただろう。ミレニアムは情報統制を敷いているが、アレは小鳥遊ホシノらアビドスカルテルの仕業だ。・・・四肢切断の状態で空崎ヒナが生きている可能性は置いておいて、残りは確実に生きている!!」

あのミステリアスな雰囲気から一転、ものすごい剣幕で私に語りかけてくる。

セイアはこほんと一息つくと

セイア「・・・とにかく、気をつけてくれ。彼女達が君の実力を見誤っているはずがない。『アヤメに逢える』などと吹き込んで君に接近するかもしれない。気をつけてくれ。」

口調が崩れるほどに、強く語りかけてくる。

ナグサ「・・・分かった。私・・・頑張るよ。砂糖なんかじゃなくて・・・必ず、自分の手で・・・掴めなかったアヤメの手を掴む」

セイアは満足そうに頷いた。


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6時間後

ウイ「・・・エえっと、その、・・・多分この子達の中であなたが欲しい内容は・・・こここんな感じです・・・」

紙束を渡される。

『黄昏の地は方舟の外なり。想ひ人に行合はば、方舟の外に赴く行ひ力、さらに行合ふと言ふ意志要る。かくて迷ひは最もやむごとなき要素なり。迷ひを捨てられば想ひ人と共にまた暮らすべけれど、さらざらばその人と共に永劫の時を黄昏の地にふることにならむ。』

ナグサ「・・・迷い・・・・・」


迷いは誰にでもある。


それを捨てなければ、想い人・・・アヤメと一緒に帰れない。

ナグサ「・・・ありがとう。ウイさん。」

本をまとめて、帰ろうとする。

ウイ「にぇぁ・・ちょ、、ちょっとマ待ってください・・・」

ナグサ「・・・何?」

ウイ「・・・・そ、その。実はマコト議長が・・3年生を対象にとある企画の説明をやるらしくて・・・・。わ私もいいくんですけど・・・。来週の火曜日、エエンジニア部のところに・・・」

ナグサ「・・・わかった」


エンジニア部室で行われるマコト議長主催の会合。

何かがわかるのだろうか。いやわかる。

その会議にも出席して、なるべく多くの情報を集めたい。

だって、全てを捨ててでも、辿り着きたい場所があるから。

・・・私は自分の居場所に帰らなければいけない。

アヤメの隣という、居場所に。


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ヒフミ生存:補習もない、ナギサもいない一般ペロキチですが生きてます。

というか療養目的で辞任してしれっとゲヘナや百鬼夜行で湯治してるナギサはマジで謝罪しろ

ウイとナグサ:陰キャ同士の会話なのでテンポはおかしい。あたりまえ。

ユカリの寝相:身共の寝相は悪い(確信)

アヤメの居場所:アヤメはとりあえず死んでいません。死んでたらナグサちゃんの意義がなくなっちゃうからね。そういてばキヴォトスの外って、先生が来た場所だったよな・・・・

ホシノ生存:ほらー言わんこっちゃない!!でもまだ北極圏から動いてないのでセーフですセーフ!!

ヒナ???キキッ!このマコト様がせっかく葬儀を主催してやったのにのうのうと生きてたら今度こそぶっ◯す!!

マコトの会合:3話で掘り下げます。

↑すまん。4話になるのぉ

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